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各所得に赤字がある場合

●損益通算とは?
個人の所得とみなされる所得には、10種類(利子所得・配当所得・不動産所得・事業所
得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得)があります。
それぞれの所得を計算した結果、黒字になることもあれば、赤字になることもあり、赤
字の所得がある場合は、所得を合算する時に損益通算ができます。
この損益通算とは、各種所得金額の計算上、赤字があった所得を、他の黒字の所得から
差し引くことです。ただし、赤字があった所得は、所得の種類に限らず通算できるわけ
ではありません。赤字が生じ、通算が可能な所得とは不動産所得・事業所得・山林所得・
譲渡所得の4種類に限定されています。つまり、この4種類の所得以外の所得で赤字が出
ても損益通算はできないのです。

●損益通算の事例
◎事例その1:給与所得のあるサラリーマンが、株の譲渡で損をした場合。会社からの
給与所得は総合課税であり、株の売買の儲けである渡所得は分離課税のため、給与所得
との損益通算はできません。
◎事例その2:サラリーマンが年度の途中で会社をやめて独立し、個人事業主として開
業した場合。個人事業主となった初年度は、事業が思うようにいかず厳しい状況であっ
ても、給与所得と事業所得との損益通算ができます。これは、給与所得と事業所得は同
じ総合課税だからです。

●損益通算ができない赤字について
所得の赤字は損益通算ができますが、赤字の金額が大きすぎて差し引けない場合は、繰
り越しができます。
例えば、個人事業主の人が300万円の事業所得があるものの、アパート経営による不動
産所得の赤字が800万円の赤字だった場合、事業所得300万円から不動産所得の赤字800
万円を差し引いて、その年の所得は500万円の赤字となります。これにより、その年の
所得がマイナス(=ゼロとなる)なり、税金はかかりません。
その翌年、事業所得が200万円、不動産所得100万円だった場合、合計300万円に対して
税金がかかるわけではなく、前年の損益通算後の赤字500万円を繰り越すことができま
す。前年の500万円の赤字と今年の所得300万円を通算すると、今年の所得は200万円の
赤字、つまり所得はマイナスになります。赤字の200万円は、次の年度にまた繰り越す
ことができます。
このように、損益通算をしても通算しきれない赤字は、3年間繰り越すことができます。