村山由美子税理士事務所 > お役立ち辞典

各所得に赤字がある場合

●損益通算とは?
個人の所得とみなされる所得には、10種類(利子所得・配当所得・不動産所得・事業所
得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得)があります。
それぞれの所得を計算した結果、黒字になることもあれば、赤字になることもあり、赤
字の所得がある場合は、所得を合算する時に損益通算ができます。
この損益通算とは、各種所得金額の計算上、赤字があった所得を、他の黒字の所得から
差し引くことです。ただし、赤字があった所得は、所得の種類に限らず通算できるわけ
ではありません。赤字が生じ、通算が可能な所得とは不動産所得・事業所得・山林所得・
譲渡所得の4種類に限定されています。つまり、この4種類の所得以外の所得で赤字が出
ても損益通算はできないのです。

●損益通算の事例
◎事例その1:給与所得のあるサラリーマンが、株の譲渡で損をした場合。会社からの
給与所得は総合課税であり、株の売買の儲けである渡所得は分離課税のため、給与所得
との損益通算はできません。
◎事例その2:サラリーマンが年度の途中で会社をやめて独立し、個人事業主として開
業した場合。個人事業主となった初年度は、事業が思うようにいかず厳しい状況であっ
ても、給与所得と事業所得との損益通算ができます。これは、給与所得と事業所得は同
じ総合課税だからです。

●損益通算ができない赤字について
所得の赤字は損益通算ができますが、赤字の金額が大きすぎて差し引けない場合は、繰
り越しができます。
例えば、個人事業主の人が300万円の事業所得があるものの、アパート経営による不動
産所得の赤字が800万円の赤字だった場合、事業所得300万円から不動産所得の赤字800
万円を差し引いて、その年の所得は500万円の赤字となります。これにより、その年の
所得がマイナス(=ゼロとなる)なり、税金はかかりません。
その翌年、事業所得が200万円、不動産所得100万円だった場合、合計300万円に対して
税金がかかるわけではなく、前年の損益通算後の赤字500万円を繰り越すことができま
す。前年の500万円の赤字と今年の所得300万円を通算すると、今年の所得は200万円の
赤字、つまり所得はマイナスになります。赤字の200万円は、次の年度にまた繰り越す
ことができます。
このように、損益通算をしても通算しきれない赤字は、3年間繰り越すことができます。

総合課税と分離課税

●所得税の課税方法は、総合課税と分離課税の2種類
所得税の課税方法には総合課税と分離課税の2種類があります。
個人の所得とみなされる所得には、10種類(利子所得・配当所得・不動産所得・事業所
得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得)があります。
所得税の計算には、まずこれらの所得を合算することが必要です。原則としては合算す
るのですが、所得の種類によっては、合算せずに個別に税金の額を計算するものがあり
ます。
所得を合算して税金を計算する方法を総合課税、所得を合算せずに個別に税金を計算す
る方法を分離課税といいます。
●総合課税とは?
10 種類ある所得のうち、不動産所得、事業所得、給与所得、一時所得、雑所得、土地・
建物、株式以外の譲渡所得は 総合課税になります。総合課税のものは、各所得を合算し
て同じ税率を用いて税金を計算します。
●分離課税とは?
10 種類ある所得のうち、退職所得、土地・建物の譲渡所得、株式の譲渡所得、山林所得
は分離課税になります。つまり、退職所得、土地・建物の譲渡所得、株式の譲渡所得、
山林所得は合算されることがなく、各所得ごとに異なる税率を用いて、各所得単独で税
金を計算します。
退職所得の場合、退職所得は老後の生活にあてるために支給されるものであるため、税
の負担を軽くしようということから、他の所得とは税金の計算方法を変えています。
分離課税について細かく見ていくと、土地・建物の譲渡のように申告しなければいけな
い「申告分離課税」と、利子所得のように利子を受けとった段階ですでに天引き方式で
課税されている「源泉分離課税」に分けることもできます。
●総合課税と分離課税の事例
サラリーマンが、親の代からあるアパート経営と株を売買する取引を行っていた場合、
会社からの給与所得とアパート経営での儲けである不動産所得は総合課税となります。
株の売買の儲けである譲渡所得は分離課税となり、単独で税金がかけられます。

納める税金

所得税の計算は以下の5つのプロセスで行います。最後のプロセスは、実際に納付する
税金額の計算です。
【所得税を計算する5つのプロセス】
(1)それぞれの所得(10種類)を計算し、合算する。
(2)各種所得控除(14種類)を所得金額から控除する。
(3)所得税の金額を計算する。
(4)申告する税金の額を計算する。
(5)納付する税金の金額を計算する。
第4のプロセスでは、「所得税額‐税額控除=申告税額」という計算式で、申告する税
金額を計算しました。
この申告税額を確定申告の時期(2月〜3月)にそのまま納めるのではありません。なぜ
なら、サラリーマンの場合は、給与を受け取る時にすでに所得税が天引きされているか
らです。このように、収入の手取り段階で税金が天引きされることを源泉徴収といいま
す。所得税の源泉徴収額は、その月の給与の金額および扶養親族などの数によって異な
ります。
●所得税の源泉徴収と年末調整について
毎月の給与から天引き(源泉徴収)される所得税は、その給与が一年間一定の水準で、
継続して支払われることを前提に計算されています。そのため、結婚や出産などによっ
て年度の途中で扶養家族が増えることがあれば、毎月の天引きによって年間の所得税を
払い過ぎてしまうことになります。
また、給与収入がその年度の途中で急に増えた場合、天引きされている額だけでは年間
の所得税としては不足していることになります。
つまり、毎月、天引きされている所得税額はあくまでも概算です。そのため、給与を支
払う勤務先では、その年の最後の給与支払時に一年間の正しい税額を計算し、徴収し過
ぎの所得税があれば還付し、不足額があれば追加で支払うことになります。これが年末
調整です。
一年間が終わってから年末調整でさまざまな調整(所得控除、税額控除など)を行うこ
とで、初めて納税金額が確定します。
8
●予定納税について
年度の途中で事業所得や不動産所得があった場合は、予定納税をしている場合がありま
す。予定納税とは、事業での儲けに対する所得税を分割で前払いすることです。その場
合は、実際に納める税金の額は、申告税額から源泉徴収税額や予定納税額を差し引いた
金額になります。
以上のことから、実際に納付する所得税の金額の計算式は次のようになります。
申告税額‐源泉徴収税額・予定納税額=実際の納税額

所得税の税率

所得税の計算に用いるものに、税率があります。所得税の計算は以下の5つのプロセスで計算しますが、第3のプロセスで登場するのが税率です。
【所得税を計算する5つのプロセス】
(1)それぞれの所得(10種類)を計算し、合算する。
(2)各種所得控除(14種類)を所得金額から控除する。
(3)所得税の金額を計算する。
(4)申告する税金の額を計算する。
(5)納付する税金の金額を計算する。
第1と第2のプロセスによって 総所得金額‐所得控除=課税総所得金額を算出することができます。 この課税総所得金額に、税率をかけて所得税の金額を計算することができます。
計算式は以下のようになります。
課税総所得金額×税率=所得税額

●所得税の速算表
所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、5%~40%の6段階があります。
課税される総所得金額(1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額)に対する所得
税の金額は、下記の速算表を使用すると簡単です。
所得税の速算表を見るとわかるように、所得の金額が高いほど、税率も高くなります。

所得税の速算表
課税総所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超 330万円以下 10% 97,500円
300万円超 695万円以下 20% 427,500円
695万円超 900万円以下 23% 636,000円
900万円超 1800万円以下 33% 1,536,000円
1800万円超 40% 2,796,000円

(例)課税される所得金額が、700万円の場合
税額は速算表で、 課税総所得金額×税率‐控除額 で計算します。 700万円の人の場合 は、以下のようになります。
700万円×0.23‐636,000=974,000円

●平成11年分から平成18年分までの速算表
平成18年以前は、所得税の税率が現在とは異なるため、平成11年分から平成18年分まで の所得税は、以下の速算表を使用します。
課税総所得金額 税率 控除額
330万円以下 10% 0円
300万円超 900万円以下 20% 33万円
900万円超 1800万円以下 30% 123万円
1800万円超 37% 249万円

申告する税金

所得税の計算は以下の5つのプロセスで行いますが、第4のプロセスでは申告する税金の金額を計算します。
【所得税を計算する5つのプロセス】
(1)それぞれの所得(10種類)を計算し、合算する。
(2)各種所得控除(14種類)を所得金額から控除する。
(3)所得税の金額を計算する。
(4)申告する税金の額を計算する。
(5)納付する税金の金額を計算する。

所得税額は、「課税総所得金額 × 税率」の計算式で求めることができますが、この 所得税額そのままを税金として納めるわけではありません。 一定の要件を満たした場合 に、第3のプロセスで計算した所得税の額から、控除できる項目あるからです。
この段階での控除を税額控除といい、所得税額から税額控除額を差し引いたものを申告 税額といいます。 計算式は以下になります。
所得税額‐税額控除=申告税額
税額控除に該当するものがあれば、納める税金を少なくできます。

●税額控除について
税額控除は、一定の条件を満たす場合に、税額(課税所得×税率で算出された税額)か ら、直接一定の金額を控除、差引くことができる制度のことです。最も身近な税額控除 のひとつが、住宅ローン控除だといえるでしょう。
【主な税額控除】
◎配当控除:株主が配当金を受け取った際に、源泉徴収された「所得税・住民税」の控 除(還付)が受けられる制度。基本的には確定申告が必要となります。
◎外国税額控除:日本に居住している者や内国法人が、外国で課税される対象となる所 得や、外国で納付した場合に、一定額が所得税、または法人税から控除される制度。
◎政党等寄付金特別控除:「政党・政治資金団体」に対する寄付を行った場合、税額の 控除が受けられる制度。
◎住宅ローン控除(住宅ローン減税):新築・中古の住宅(敷地)をローンで購入、ま たは住宅を増改築した場合、一定の条件を満たせば「最長10年間」年末のローン残高に 応じて所得税が軽減、還付される制度。

●定率減税
平成18年をもって廃止されましたが、かつては 定率減税がありました。これは、景気回 復のために導入された、税負担を軽減する暫定的な措置。所得税を納めるすべての人に 認められていたもので、所得税や住民税として納税する金額のうち、それぞれ一定の割 合について控除する、つまり税金を減らせるというものでした。
定率減税

【11年(度)分〜17年(度)分】 【18年(度)分】 【19年(度)分以降】
所得税 税額の20%相当額を控除
(25万円を限度)
税額の10%相当額を控除
(12.5万円を限度)
廃止
住民税 税額の15%相当額を控除
(4万円を限度)
税額の7.5%相当額を控除
(2万円を限度)
廃止

所得税の計算方法

所得税の計算の仕組みについて紹介しましょう。所得税の計算は、段階的に計算をしていきます。その理由は、さまざまな種類の税金の控除や免税措置があり、一旦それらを計算し、総所得額から差し引いた金額に対して所得税の納付額の計算がなされるためです。

◎基本的な所得税は、以下のように5つのプロセスで計算します。
(1)給与などの所得(10種類)をそれぞれ計算し、合算する。
(2)各種所得控除(14種類)を所得金額から控除する。
(3)(2)で計算した所得税の課税対象額に所得税率をかけて、所得税の金額を計算する。
(4)税額控除を考慮し、申告する税金の額を計算する。
(5)納付する税金の金額を計算する。

◎第1のプロセスで計算した、個人の所得とみなされる所得は、以下の10種類です。
1.利子所得:給料(課税計算では給与所得から給与所得控除を差し引きます)
2.配当所得:銀行貯金の利子など
3.不動産所得:株・投資信託などの分配金など
4.事業所得:家賃収入など(必要経費を差し引いた額)
5.給与所得:個人での営業活動による収益(必要経費を差し引いた額)
6.退職所得:退職金収入(退職控除を差し引いた額の2分の1)
7.山林所得:収入金額から経費・特別控除を差し引いた額
8.譲渡所得:譲渡を受けた建物など
9.一時所得:収入から経費を差し引いた額
10.雑所得:退職年金所得

上記の10種類の所得をそれぞれ計算します。所得の計算は、原則として「収入−必要経費」です。10種類それぞれの所得を計算したら、それらを合算します。合算した所得のことを総所得金額といい、所得を合計して課税することを総合課税といいます。

◎10種類ある所得のうち、総合課税となるもの(所得を合算するもの)は、以下の7種類です。
1.利子所得
2.配当所得
3.不動産所得
4.事業所得
5.給与所得
9.一時所得
10.雑所得

◎分離課税について
総合課税に対して、合算せずに分離して課税する分離課税もあります。分離課税となるもの(所得を合算しないもの)は、10種類ある所得のうち、以下の3種類です。
6.譲渡所得
7.山林所得
8.退職所得

◎総合課税と分離課税の違いについて
総合課税と分離課税は、所得の性質が異なるため、税金のかけ方が異なります。


確定申告書の提出期限と納税の期限

毎年3月15日が確定申告の提出期限です。
税務署への提出を郵送で行う場合には、以下のことに注意しましょう。
◎税務上の申告書や届出書は「信書」に当たるため、税務署に送付する場合は「郵便物(第一種郵便物)」または「信書便物」として送付します。
◎「郵便物(第一種郵便物)」として出せば、消印の日付が提出日とみなされます。
◎ゆうパック、小包、宅配便、メール便などは「郵便物(第一種郵便物)」には該当しません。これらで提出する場合は、税務署に到達した日が提出日となります。気をつけましょう。

●納税の期限と注意
税金をいつまでに納めればよいかは、税金の種類によって異なります。
◎法人税
確定申告分は、事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に納めます。
例えば、3月決算会社の場合、納税の期限は5月31日となります。
◎消費税
法人の場合は、確定申告分は事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内です。
個人事業者の場合、消費税などの納付期限は翌年の3月31日です。
◎申告所得税
所得税の納付期限は翌年の3月15日
・予定納税の第1期分は、その年の7月31日が納付期限になります。第2期分の納付期限はその年の11月30日になります。
◎源泉所得税
・納期の特例の承認を受けていない場合は、源泉徴収の対象となる所得を支払った月の翌月10日。
・納期の特例の承認を受けている場合(給与等特定の所得に限る)
は、1月から6月までの支払分は7月10日が期限です。7月から12月までの支払分は翌年1月10日 です。(納期限の特例適用者は、翌年1月20日が期限になります)

◎相続税
確定申告分は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内となります。
◎贈与税
贈与税の納付期限は翌年の3月15日です。

※いずれの場合も、納付期限が土日、祝日などの休日の場合は、翌日(平日)となります。


●納税の方法について
納税の方法には以下のようなものがあります。
◎税務署にて納付
納付書に、納める税金の金額を記入し、金融機関の窓口または所轄の税務署にて納付します。納付書がない場合は、近くの税務所などに用意してある納付書で、上記期限までに納付します。

◎電子納付
ダイレクト納付、インターネットバンキングなどを利用する電子納税もできます。
◎預貯金口座からの振替納税(引き落とし)で納付引き落としでの納付は、申告所得税や個人事業者にかかる消費税および地方消費税の納税に利用できます。
振替納税の場合、振替日(引き落とし日)は、以下のようになります。
・所得税の確定申告分は、翌年の4月中旬から下旬
・消費税および地方消費税の確定申告分は、翌年4月中旬から下旬

※振替納税の期限は、現金納付の場合より1ヵ月近くも後になります。また、振替なら納税のし忘れを
防ぐこともできるでしょう。
※贈与税は、振替納税ができません。贈与税の納付は、税務署での納付か電子納付で行います。



確定申告が必要な人

給与所得者であるサラリーマンは、ほとんどの場合、確定申告を行う必要がありません。給与の支払
者である会社が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了するためです。しかし、サラリーマンであっても義務として確定申告が必要になる場合があります。

●確定申告が必要な場合
以下の場合、サラリーマンであっても原則として確定申告を行う必要があります。
◎給与収入が年間2,000万円を超える人
◎1ヵ所から給与をもらっている人で、副業など給与所得以外の所得が20万円を超える人
◎2ヵ所以上から給与をもらっている人で、年末調整をされなかった給与の収入金額と、給与所得およ
び退職所得以外の所得の合計が20万円を超える人

※ただし、給与所得の金額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄付金控除、基礎控除を
除く)を差し引いた金額が150万円以下で、各種所得の金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円以下の人は、申告する必要はありません。
◎同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金
の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
◎給与について、災害減免法により源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けた人
◎源泉徴収義務のない者から給与などの支払を受けている人

●所得の合計金額についての注意
以下の場合は、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額には入りません。注意しましょう。
・配当所得のうち、確定申告不要制度を選択したもの
・源泉徴収を選択した特定口座内保管上場株式などの譲渡による所得で、確定申告不要制度を選択したもの
・雑所得のうち源泉分離課税とされる割引債の償還差益
・利子所得や配当所得で源泉分離課税とされるものなど

●確定申告をすれば税金の還付を受けられる人
サラリーマンで、確定申告をする義務はなくても、申告すれば税金の還付を受けられる場合がありま
す。以下の場合は、税金の一部が戻ってくることもあるので、所得についてはもちろん、結婚や住宅の購入など自分の生活状況について確認してみましょう。

◎給与所得がある人で、雑損控除、医療費控除、寄付金控除、住宅借入金といった特別控除などを受けることができる人
◎給与所得がある人で、年の途中で退職し、その後就職をしなかったため、年末調整を受けていない人
◎退職所得のある人で、以下のいずれかに該当する人
・退職所得以外の各種の所得金額の合計額から所得控除の合計額を差し引くと赤字になる人
・退職所得などの支払いを受ける際に、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかったため、20%の税率で源泉徴収され、その源泉徴収税額が正規の税額を超えている人。
・予定納税を行ったが、廃業などで確定申告の必要がなくなった人
◎年末調整に間に合わなかったものがある場合
・年末調整後に子どもが生まれた人は、扶養控除が適用できます。妊娠・出産に関する医療費については、医療費控除の対象になります。
・年末調整後に結婚し、扶養家族が増えた人の場合は、扶養控除が適用できます。

●各控除を受ける際の注意
◎確定申告で各控除を受けるには、上記以外にもさまざまな条件があります。
◎上記以外にも確定申告で税金の還付が受けられるケースもあります。
◎確定申告を行うことが得になるかどうかは一概にいえない場合があります。

所得控除

所得税の計算にかかわるもののひとつが、所得控除です。所得税の計算は以下の5つのプロセスで計算しますが、第2のプロセスで登場するのが所得控除です。

【所得税を計算する5つのプロセス】
(1)それぞれの所得(10種類)を計算し、合算する。
(2)各種所得控除(14種類)を所得金額から控除す
る。
(3)所得税の金額を計算する。
(4)申告する税金の額を計算する。
(5)納付する税金の金額を計算する。

●所得控除とは税負担を軽くするための配慮
所得(10種類)を合算した総所得金額から控除(差し引く)する所得控除は、14種類あります。この14種類の所得控除には、医療費控除、社会保険料控除、扶養控除などがありますが、おおまかにいえば「生活の質に着目しているもの」と「社会政策的な配慮から設けられているもの」の2つに大別できます。

◎生活の質に着目した所得控除
所得控除は、生活面での個人的な事情に基づいて認められる項目といえます。たとえば、所得額が同じであっても、扶養家族がいる人と独身の人とでは生活に必要なお金が違ってきます。病気がちな人、面倒をみなくてはいけない家族が多い人などについては、生活の質に着目して税負担を軽くする配慮がなされます。障害者控除や寡婦控除(または寡夫控除)も、生活の質に着目した所得控除になります。
◎社会政策的な配慮から設けられている所得控除
社会保険料を納めている人や生命保険、地震保険などに加入している人などについては、社会政策的な配慮から税負担を軽くする配慮がなされています。
その他、寄付金控除などもあります。

所得税を計算する際の第2のステップでは、総所得金額から所得控除を差し引きます。後の金額が、課税所得金額です。計算式は以下のようになります。
総所得金額−所得控除=課税所得金額

支店独立会計

簿記における本支店会計の制度のひとつ。支店ごとの経営成績、および財政状態を明らかにするために、本店とは別に支店独自の帳簿組織を設ける制度です。
この制度は、本店・支店を含めた会社全体以外にも、本店は本店で、支店は支店でそれぞれの業績を把握できます。つまり、業績のよい支店はどこか、といった支店の状況を把握しやすいというメリットがあるのです。

●支店独立会計制度の記録について
支店独立会計制度を採用した場合、本店と支店の両方に帳簿を設置します。本店が行う取引は本店の帳簿に記録し、支店が行う取引は支店の帳簿に記録します。
本支店間における内部取引を行った場合は、本店の帳簿と支店の帳簿の両方に記録します。
もう少し詳しく説明すると、本店と支店間の取引、および支店同士の取引は、いったん外部取引のように記帳されます。それに伴い、本店勘定、支店勘定、本店仕入勘定、支店売上勘定といった固有の勘定が設けられます。 ただし、本店および各支店は法的にひとつの企業を構成するのであるため、決算時には本店および各支店を合併した財務諸表が作成されます。

●支店独立会計制度の仕訳
本店と支店との間で行った内部取引に関する仕訳には、支店勘定と本店勘定を必ず使用します。本店の帳簿では支店勘定を使い、支店側の帳簿では本店勘定をいます。このため、本店勘定と支店勘定は金額が必ず一致するという性質があります。

● 内部取引の例
・送金取引:本店から支店、または支店から本店にお金を送った場合など
・債権債務:本店の売掛金を支店が回収する場合など
・立替取引:支店の費用を、本店が立替払いをした場合など
・内部的費用や収益:社内利息など、実際のお金のやりとりをしない取引など
・商品の受払:本店が外部から仕入れ、支店が販売する場合など
・直接仕入・売上:本店を経由せず、支店が直接仕入れを行う場合など

使途不明金

支出した目的や理由が不明なもの、支出の相手が明らかでない支出を使途不明金といいます。一般に税務上は損金として算入されません。
使途不明金の具体例としては、交際費や機密費など支出額や支払先がわかっているものの、支出目的が不明なものです。領収書が発行されないリベートや謝礼なども使途不明金になります

使途不明金とは、会社として負担すべき支出かどうか、会社の事業と関係があるかどうかも含めて支出目的が明確にならないものです。こうした支出は、会社としては支出先や支出金額はわかっているものの、どんな目的で支出したのかが明確でないため、会社の経費で処理することができません。

使途不明金と混同しがちなものに、使途秘匿金があります。これは、支出目的を含め、すべてが不明なものです。使途秘匿金は、全額損金不算入となり、通常の法人税に加え、支出額の40%の追加課税が行われます。地方税の負担を合わせると、支出額とほぼ同額の税金が課されることになります。さらに、支出額が課税対象になり、赤字法人でも納めなければなりません。

●使途不明金の処理について
使途不明金は、事業との関係が明確になっていない支出であるため、会社の経費として処理はできません。会社の決算書上は手数料などとして処理しますが、申告書において「損金不算入」として税金の対象とします。税金対象であっても、税務調査などにおいて使途不明金の支出先などを一切明らかにしないことはできません。支出先などの記録は明確にしておくことが必要です。領収書のもらえないリベートや謝礼などがこれに当たります。
領収書が発行されない場合は、注意が必要になります。なぜなら、この場合、会社は使途不明金として税負担を行うことで処理しますが、支出先などを明確にしておかなければ、役員に対する賞与として役員個人にも税負担が生じることになりかねないからです。


資本余剰金

資本取引によって生じた剰余金のことを資本剰余金といい、資本準備金とその他資本剰余金から構成されます。資本剰余金は、新株発行などの資本取引によって増資し、発生した剰余金であるため、利益剰余金(損益取引から生じた剰余金)とは区別しなければなりません。

●資本準備金とその他資本剰余金について
・資本準備金とは?
資本剰余金をその他資本剰余金とともに構成しているもの。株式を発行し、その払込を受けた金額のうち、資本金に繰り入れずにおく金額のことを資本準備金といいます。資本金の2分の1未満の金額を
資本準備金にすることができます。資本準備金には払込剰余金、合併差益などがあります。

資本準備金は、会社法によって積み立てることが義務づけられています。利益準備金と合計した額が資本の4分の1を超えた時、資本剰余金に振り替えることができます。
資本準備金として積み立てることが必要とされているもの、および、その他資本剰余金から配当する場合で、利益準備金と合わせて資本金の額が4分の1に達していない時は、これを計上しなければなり
ません。


・その他資本剰余金とは?
その他資本剰余金は、資本準備金の取り崩しによって生じる剰余金のことです。その他資本剰余金には、会社更生および整理などによって生じた固定資産評価差益、貨幣価値の変動によって生じた保険差益などの評価剰余金、資本助成を目的とする贈与剰余金などがあります。
これらの剰余金は、特別揖益項目として扱われ、株主総会の議決を経て積み立てられた場合、任意積立金となります。



支配力基準

連結財務諸表を作成する際、連結の対象となる連結子会社の範囲を定める基準のひとつです。
かつては、持株基準によって発行株式数の100分の50以上を保有する場合、当該被保有会社を子会社とすることとされていました。しかし、経営者の勝手な判断が介入する余地があるとの問題認識か
ら、1997年の連結財務諸表原則の改正によって、持株基準に加えて支配力基準を用いて、連結子会社に含むかどうかを判定することになりました。
支配力基準の「支配」とは、他の会社の意思決定機関を支配していることをいいます。

●具体的な支配力基準
以下のような基準が、支配力基準です。
・他社の議決権の過半数を実質的に所有している場合

・議決権の所有が50%未満であっても、高い比率の議決権を所有し、なおかつ他社の意思決定機関を支配しているという一定の事実がある場合

このように、支配力基準は議決権の過半数を所有していなくても 、取引・役員派遣・資金援助などを通じて、他社の経営を実質的に支配しているという 経済的な事実関係で判定するものです。


●支配力基準と持株基準
支配力基準は、形式的基準である持株基準に対し、実質的基準とも呼ばれています。これは、形式的基準だけでは企業グループ全体の実態を正確に判断することはできないという欠点をカバーするために導入されました。

支払手形

業務上の取引において、債務を支払うために取引先に渡した約束手形と為替手形のことを支払手形といいます。
仕入先との商取引によって生じた手形上の債務であり、次のような場合に債務が生じます。

・商品やサービスなどを仕入れた対価として、仕入れ先に代金支払いのために約束手形を振り出した場合
・自分が買掛金を負っている相手先からの求めに応じて為替手形の引き受けを行った場合


●支払手形の記録について
支払手形は貸借対照表において、貸方項目の「負債の部」に計上されます。会計上、支払手形として処理される手形債務は、商品や原材料の仕入れによって生じた営業取引に関するものです。そのため、通常の営業以外の取引で発生した手形債務(設備の建設、固定資産や有価証券の購入など)は、支払手形とは明確に区別し、「営業外支払手形」や「設備支払手形」など別の勘定科目で処理しなければなりません。

●約束手形と為替手形
通常、支払手形には約束手形と為替手形の2つがあります。
・約束手形は、振出人が、受取人またはその指図人に対して、一定の期日に一定の金額を支払うことを約束する有価証券です。

・為替手形は、振出人が、第三者(支払人)に委託し、受取人またはその指図人に対して、一定の期日に一定の金額を支払うことを約束する有価証券です。

会計上では、約束手形と為替手形を同じ勘定科目で処理します。

支払手形勘定

支払手形勘定は勘定科目のひとつで、通常の営業取引に基づいて生じた支払の約束手形を処理するための勘定科目です。具体的には、約束手形の振出し、為替手形の引受け、自己宛為替手形の振出しによって生じた支払義務を記録するための負債勘定です。
支払手形は数ヵ月後に支払う約束手形のことで、支払手形台帳を使って把握しておくことが大切です。

●支払手形勘定の記録について
支払手形勘定は、支払手形の発生や消滅を処理するために設定された負債に属する勘定であり、 支払手形には正常営業循環基準が適用されるため、貸借対照表上では流動負債として扱われます。

約束手形の振出しなどにより、手形債務が発生した場合は負債の増加として貸方に記録します。
手形代金を支払期日に支払った場合は、手形債務もしくは消滅になるため、負債の減少として借方に記録します。
支払いを延期するため手形を更改した場合は、旧手形債務の消滅を借方に記録し、新手形債務の発生を貸方に記録します。

●支払手形勘定の仕訳例
・100,000円分の製品を仕入れ、仕入先宛てに約束手形を振り出した
・ 借方:仕入高100,000    貸方:支払手形100,000

・買掛金200,000円の支払いとして約束手形を振り出した
・ 借方:買掛金200,000     貸方:支払手形200,000

・仕入れ先宛に振り出した約束手形300,000円が満期日となり、銀行の当座預金から支払ったとの通知を受けた
借方:支払手形300,000    貸方:当座預金300,000


資本概念

会計上の資本概念にはさまざまなものがありますが、広い意味での資本概念は総資本であると考えることもできます。
総資本は、貸借対照表の貸方をすべて合算したもので、企業のすべての資本の総額を意味します。総資本の構成は、会社が外部から調達した他人資本(借入金や社債などの負債)と、株主が出資した資本金や過去の利益を蓄積した自己資本を合算したものです。自己資本は返済義務がない調達資本という意味で、資産と負債との差額を指す資本といえます。


●総資本の内訳
資本概念として捉えることができる総資本は、負債と自己資本から構成され、それぞれの内訳は次のようになります。負債の内訳は、支払手形、買掛金、短期借入金、未払金、前受金、預かり金、商品券などの流動負債、長期借入金や社債、退職給与引当金などの固定負債で構成されます。
自己資本の内訳は、資本金、法定準備金(資本準備金、利益準備金)、剰余金から構成されます。
・総資本の貸借対照表での計算は以下のようになります。
総資本=他人資本(負債)+自己資本
この式は貸借対照表等式と呼ばれる、基本的な等式です。

総資本は、総資産に対する概念ともいわれ、負債と純資産の合計額です。上記でも記載したように貸借対照表の貸方をすべて合算したもので、総資本=総資産=純資産+負債となります。
こうした意味から、総資本が総資産(純資金+負債)自体を指す場合があります。


資本勘定

株主が払込をした金額のうち、資本金とした金額を処理するための勘定科目で、資本金、資本剰余金または欠損金の科目に分かれます。
企業財産の増減を記録・計算する実体勘定のひとつであり、企業の所有者への帰属分を示す持分(出資)に応じて有する権利義務の総体を示す勘定です。そのため企業資本の調達源泉に着目し、出資金勘定ともいいます。

●資本勘定にかかわる連結決算
資本勘定に関連して連結決算を行う場合は、親会社の投資と連結子会社の資本は対応するため、両者を相殺消去して、子会社の資産・負債を明確にします。 こうした処理を行う理由は、親会社が行った投資の実質的な内容が子会社の純資産を意味するためで、親会社と子会社との間で行われた内部取引と等価であると考えられるためです。

●国際収支項目での資本勘定
資本勘定は、企業の資本金の勘定項目の他、国際収支項目にもあります。国際収支項目の場合、国際間の資本取引によって生じる受け払いの関係を示す勘定、資本収支のことをいいます。
国際収支とは1年間の国際取引の受け取りと支払いの勘定の記録で、国家の家計簿のようなものといえるでしょう。


資本金勘定(株式会社)

●株式会社の資本金勘定とは?
株式会社は、出資者である株主に対して設立されます。株式会社の設立については、かつて資本金が1,000万円以上という制約がありましたが、2006年に施行された新会社法によって資本金1円
でも設立できるようになりました。
株式会社の資本金勘定とは、出資された資金を記録する勘定であり、法定資本(会社法が定める株式会社の資金の額)を処理する勘定となります。これは会社設立、現物出資、増資などの限られた仕訳に使用するものといえます。
出資は、現金だけではなく、土地や建物など現物出資も含まれます。

●株式会社の資本金勘定の記録について
個人企業の資本金勘定が、純資産の変動を処理する勘定であるのに対して、株式会社の資本金勘定では、純資産額ではなく、資本の一部を示します。 勘定の残高は債権者保護のため、商法上保有されるべき正味財産最低基準額を示すこととなります。

資本金勘定(個人企業)

●個人企業の資本金勘定とは?
資本金勘定は、資本の引き出しに関する仕訳のことをいい、個人企業の資本金勘定は通常、純財産(資産総額と負債総額との差額)の変動をあらわす勘定として示されます。

個人企業の場合、企業主が会社のお金を私用で使うことがあり、会社のお金と家計を混同しがちになります。 私用の支払いは、会社の費用としては認められないため、その取引を記録する方法とし
て、 資本金の勘定科目を使う方法 と 引出金の勘定科目を使う方法があります。


●個人企業の資本金勘定の記録について
企業主が私用の支払いに会社のお金を使うたびに、資本金の勘定科目を用いて仕訳をします。
個人企業の場合、出資者は単一であり、確定資本の原則もありません。
そのため、基本的に資本勘定に属するものは資本金勘定のみといえます。資本金勘定に記入するものは、資本の元入れ(開業時に現金、建物、備品などを資本金・純資産の勘定に計上すること)、企業への追加出資(その後の出資)、企業からの引出し(私用のために現金や商品を持ち出すこと)など、企業主による出資額の増減です。そして、決算時に算出された純損益は、損益勘定から資本金勘定に振り変えられます。

企業主と企業との間に生じた一時的な資金の出入れや物品の融通は、別途に設けられた引出金勘定に記入されます。引出金の勘定項目を使って処理する場合、決算では引出金勘定の残高をすべて資本金勘定へ振替える仕訳を行います。引出金勘定は、決算整理が終わった段階で必ず残高がゼロになり、決算資料の貸借対照表には記